RONCE

「ronce」と書いて「ロンス」と読む。 

ブラックベリーのフランス語のことらしい。 

そんな名前を持つ猫が我が家にはいる。 
2005年8月19日生まれの今日で七歳になったメス猫だ。 
名前をつけたのは嫁である。 
この家において、自分にそんな決定権は存在しない。 

元は知り合いのアニメーターさんの家で生まれた雑種のうちの一匹で 
売れ残った二匹のうちの片方だった。 

自分が4クールも続けなくてはならないテレビアニメの初監督作品を 
任された夏である。 
そんな大変なときにこいつはやってきたのだ。 

抱かれるのを嫌がるが、傍にいたがって体を寄せてくる 
甘え下手なメス猫で、 
2006年1月に子宮摘出の避妊手術を受けさせている。 


そのせいか、どこか子供っぽさの抜けないまま 
家の中で七年間を過ごし、この歳になっていった。 

自分はこの七年間で体重が増え、白髪も増えた。 
子供のいない家庭だからこそ 
子供の代わりのようなものでもあった。 

特に大きな病気もせず、事件といえばベランダから落ちたことが二階くらい。 
一度目は一晩ほど見つからず、どこに行ったのかと思えば 
リビング裏のクーラーの室外機の横で小さく丸まって鳴いていたのを発見した。 
二度目はベランダに届かんばかりの大きさのコニファーの葉に 
しがみついているのを目撃したので正直、笑うしかなかった。 


ほんとうに気がつけば七年である。 


とりあえず猫は七歳から老猫の領域に入る。 
餌も気を使わなくてはならない。 
とはいえ、ほんとに病気しない猫なので今のところ健康で 
年に一度の（最近はサボり気味ではあるが）健康診断につれていくと 
３キロちょっとしかないせいか痩せ過ぎを指摘されるぐらいで 
至って健康。 

ただ今は夏のためか一日涼しいところを探して床に転がっているのが常。 
涼しくなったら少しは遊んでやらないと。 

走ったり跳んだりは今のうちだけなのだから。 

それは自分も同じことだけれど……。 


こいつとは明日から、また新しい一年がはじまる。 
餌をやって毛を梳いてトイレ掃除して一緒に寝る。 
昨日と変わらない新しい明日が。 
七年間、ほとんど変わってない、毎日が明日もやってくる。 


＊写真の説明：ドアップは今日とったもの。 

＊ひいた写真は２００６年１月、避妊手術から戻ったばかりの頃のもの。 

＊器の写真は七年愛用の餌皿。いろいろやってきたな……ほとんどカリカリだけど。